ガンドリルマシンと深穴加工技術

 

1. ガンドリルマシンの開発
 硬度HRC40以上のチタン合金Ti-6AL-4Vにφ1.6x80Lの穴が真っ直ぐに加工できると言っても
穴加工の知識のある方なら信じないだろう。
そんな夢のようなことを可能にできるのがガンドリル加工である。
当社は、高圧技術(300Mpa以上)を使用した様々な機械を製造販売しています。
それらの高圧噴射ノズルや流体制御部品はSUS630,チタン合金などの難削材に
細径深穴加工が多くありコストアップの要因となっていました。
 そこで自社製品のドリルユニットと小型M/Cの技術ノウハウを生かし、
ガンドリルマシンを自社製作し製造現場でガンドリル加工を行ってきました。
最近ディーゼルエンジンの排気ガス規制対策として燃料噴射システムが
コモンレール式(各筒制御)と呼ばれる方法に変わり、噴射ノズルの生産量が増加しています。
この噴射システムは100MPaを越える高圧で燃料を噴射しますので、噴射ノズルホルダに
あけられる穴は当社の高圧部品と同様、面粗度・真直度・真円度の高いものが要求されます。
その要求を満たす穴開け工具としてガンドリルが使用されるケースが多く、ドリルサイズは
φ1.6〜φ5の小径が主流のため、小径ガンドリル加工専用のコンパクトで高剛性を有する
ガンドリルマシンを開発しました。(写真1)

(写真1)
2002年2月19日・つづく
2. ガンドリル加工とは
近年、製品のダウンサイジング化に伴い、部品の小型化が進み穴加工も
小径・深穴が多くなり、高精度化や高能率化が求められています。
一般的に穴径(工具径)Dに対して深さLが5倍(5D)以上の場合が
深穴開け加工といわれています。
ツイストドリルではL=5Dを越える場合、ステップフィードにより、
切屑を排出し刃先にクーラントを届かせるようにするのが一般的です。
これに対して穴径の50〜100倍といった深穴加工をステップフィードなしで、
高精度・高能率に加工する工具としてガンドリルが多く使われるようになってきました。
ガンドリルとは、[図1]のように超硬刃部・シャンク・ドライバの3部分より
構成されている工具で、それぞれがロウ付けにより結合され一体となっています。
ガンドリルの最大の特徴は、切屑が巻き付かない程度の適当な長さに切断されることです。
それはガンドリルの刃部が[図2]のように特殊な形状の超硬1枚刃になっていることに
よります。

[図1]ガンドリル



[図2]


外切れ刃と内切れ刃の2つの切れ刃から出る切屑が、互いに干渉し合って
それぞれを切断し、高圧クーラントでツールに巻き付くことなく排出されます。
この切屑は、シャンク部のV溝を通ってクーラントとともに連続的にチップボックスへ回収されます。
このためガンドリル加工の場合、ステップフィードの必要が無く、
ノンステップで穴径の50〜100倍程度の深穴を開けることができます。
シャンクの中空部には高圧クーラントが通り、外側のV溝部を切屑がクーラントに
押し流されていきます。
また、シャンクには回転と送りを滑らかに先端の刃部に伝えるため、
高い靭性と強度が求められます。
ドライバ部はガンドリルをスピンドルに固定する部分です。
回転と送り、クーラントをスピンドルからシャンク、刃部へと伝達しなければならず、
ガンドリルを正しい軸上にセットするために重要な部分です。
ガンドリルは1枚刃で自動求心性がありませんので、センターが決められるまでは
ドリルブッシュでガイドする必要があります。
その後は、開けられた穴によって案内されて前進します。
切削抵抗を受けながら開けられた穴で案内させるために、ドリルヘッド部分に
は案内パッドが付けられています。[図2]
この案内パッドは穴の内面に強く押し付けられるためバニシング効果を生じ、
優れた面粗さを得ることができます。
 穴開けをスムースに進行させこの品質を得るためには、切れ刃と案内パッドに
強力な冷却と潤滑を与え、かつ連続的に切屑排出がされなければなりません。
このためガンドリルには適切な量のクーラントが必要であり、これを供給するために、
クーラント循環装置を必要とします。
これはガンドリルマシンに組込まれるか、または別のユニットとして用意されます。
ブッシュの代わりに、普通のドリルで開けられた浅いガイド穴を設けることにより、
ガンドリル加工を行うことも可能です。
この方法によりマシニングセンタでもガンドリルを使用し、高い生産性と精度を
得ることができます。
ただし、加工可能穴深さはL/D=Max.40程度です。
2002年4月23日・つづく